置かれた場所で開(ひら)けた〝世界〟

April 13, 2017
置かれた場所で開(ひら)けた〝世界〟

山路選手。東京・江東区辰巳のラグビー練習場で

 

ニュージーランド、南アフリカなど、ラグビー強豪国のプロクラブが競う「スーパーラグビー」。この世界最高峰リーグで戦う日本チーム「サンウルブズ」の山路泰生選手(32、キヤノンイーグルス/東京・上野教会)は、司祭を志した中学時代を長崎の神学院に暮らし、ラグビーと出合った。日本代表として世界を回る今、「自分の洗礼の意味」を感じているという。


身長180センチ、体重108キロの山路選手。ポジションは〝支柱〟を意味する「プロップ」。スクラムの最前列で対戦相手とぶつかり合い、〝縁の下の力持ち〟としてもチームを支える。


東京・台東区出身。信者の家庭で、7人きょうだいの末っ子として育った。父親に付いて教会へ行くのが好きで、小学6年で司祭になることを決意。父・尚重(よししげ)さんの勧めもあって、中学時代は、長崎の聖ルドヴィコ神学院(神言修道会)に住み、長崎南山中学校へ通った。


だが高校生になる直前、尚重さんが脳梗塞で他界。悲しみのあまり東京に戻ろうと考えていると、兄や姉から目標を持つよう諭す手紙が届く。途方に暮れていたところ、体格の良い山路少年にラグビーを勧めていた、長崎南山高校ラグビー部の監督が動いた。「『修道院をやめた山路にとりあえずラグビーやらせろ』と言って、部員全体が誘いだして。いつの間にか僕も(部の)バスに乗っていたんです」



感謝を胸に


高校、大学とラグビーを続け、社会人として国内トップリーグ入りも果たしたが、「神父になる夢を諦めた人間」として、自分を見つめてきた。


「ラグビーのために教会に協力できなくなり、申し訳ない気持ちでした」
 司祭の道を諦め、母を泣かせて始めたラグビーで伸び悩み、長年葛藤を抱えてきた。そんな中、母の勧めで『置かれた場所で咲きなさい』(渡辺和子著)を読み、母親や家族、教会の人らの祈りに力を感じ、恩返しのつもりでラグビーをするようになった。昨年11月、「サンウルブズ」に大抜擢されたのは、そんなタイミングでもあったという。


日本が「スーパーラグビー」に加わったのは昨シーズンから。追って代表入りした山路選手は神学院時代の経歴が注目され、チームの公式サイトのプロフィールにも「洗礼名はレオニッサのヨゼフ」とある。


信者でない人にも「ヨゼフ」と呼ばれると笑いながら、山路選手は、自分の「洗礼の意味」を感じていると言う。父親が考えた自分の洗礼名は、聖体訪問のために各地を回った聖人であることを調べて知ったが、かつて司祭を志したのは、世界を回る宣教師を目指したからだ。


「ラグビーで世界を回ることになったのが不思議です。昨年のヨーロッパ遠征の際は、日本代表のラグビー(選手)の格好で憧れの大聖堂へ。力を感じました」。教会は初めてだという後輩の反応もうれしかった。


教会で大切なのは、「過ちを犯しても、ゆるしがあること」。神学院でもしていた聖体訪問や祈りの時を支えに、今、結婚して恵まれた3人の子どもにも力をもらい、現役でラグビーを続けることができている。


感謝を胸に初めて挑む「スーパーラグビー」17年シーズンは2月に開幕。母・恵子さん(73/上野教会)は、東京で4月8日に行われた対ブルズ戦での勝利を見届け、喜びをこう語った。「もち米のように粘ってほしいと、学生の頃から赤飯のおにぎりを握って息子や仲間の選手、裏方の人に届けてきましたが。ここまで来るなんて、本当に不思議です」

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