通信制中学の意義

February 10, 2017
通信制中学の意義

映画『まなぶ 通信制中学 60年の空白を越えて』より (C)まなぶ

東京には、戦後の混乱期に中学校の義務教育を受けられなかった高齢者を対象とする、公立の通信制中学(中学校通信教育課程)がある。今年3月25日に東京で公開される記録映画『まなぶ 通信制中学 60年の空白を越えて』(太田直子監督)は、千代田区立神田一橋中学校通信教育課程の5年間を追った作品だ。2月1日には東京都内で上映会が行われた。


同通信制中学では、レポート作成などの家庭学習を中心に、毎月2回登校して、丸1日かけてさまざまな教科の授業を受ける。ここで学ぶ生徒たちは、国民学校初等科(現小学校)を卒業後、米と引き換えに奉公に出された者、軍医だった父親が広島で被爆死したため進学を断念した者など、戦中戦後の混乱に巻き込まれ、勉強の機会も与えられないまま必死で働いてきた人たちだ。


12歳で水道工事店に奉公に出された70代の男性も、幼い頃から先輩に殴られながら仕事を覚えた。定時制高校に行きたくても、また水道工事の国家資格を得たくても、中学の卒業資格がないため諦めざるを得ず、自暴自棄になった時期もあった。現在は、妻の介護をしながら通信制中学で学ぶ。


「もっと早く学校に行ってたら、こんなに卑屈にもならず、これほど世の中への偏見に満ちた見方もせずに済んだろう」と悔やんでいるが、3年間の学びによって、自分への誇りが持てるようになった。そして、新たに通信制高校を受験する。


通信制中学は、学校教育法附則第8条(旧第105条)に基づいて、1948年に81校設置されたが、現在は、東京と大阪の2校だけ。中学校卒業資格が得られるのは東京だけで、現在、平均年齢84歳の男女4人が学んでいる。


上映後のイベントで、神田一橋中学校通信教育課程の飯塚光司さんが、日本で唯一の通信制中学専任教師として、「通信制中学を存続させる責務を感じる」と話した。同校には、10代や20代の若者たちから、通信制中学への入学に関する問い合わせが多く来ているという。


しかし、現行の法律には、通信制中学で学べる対象者は「尋常小学校卒業者及び国民学校初等科修了者」となっていて、現在80歳を過ぎた高齢者しか現実には入学できない。


国内には、義務教育未修了者が百数十万人いると言われているが、夜間中学(中学校夜間学級)や通信制中学の数が著しく少ないため、学び直しができない人々が大勢いるのが実状だ。


夜間中学校元教員の関本保孝さん(基礎教育保障学会事務局長)は、2月14日から全面施行される「教育機会確保法」によって、夜間中学校の設置が保障されることになったことについて、こう話した。


「夜間中学を各都道府県に1校ずつ設置しても、まだまだ足りません。それならば、一つの方法として、夜間中学をセンター校にして、通信制中学を併用すれば、年齢、国籍を問わず、多くの人が学ぶことができます。そのために、通信制中学の対象者の枠を広げるように法改正を求めていきたいと考えています」

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