ギャンブル依存症への誤解

February 10, 2017
ギャンブル依存症への誤解

ワンデーポートサンタ音楽隊。クリスマスに、街中でお菓子を配りながら歌って歩いたメンバーたち

カジノを中心とする統合型リゾート(IR)整備を推進する「IR法」が昨年12月、成立した。これは「カジノ法」とも呼ばれ、政府は1年以内に実施法案に、ギャンブル依存症支援対策を盛り込むという。こうした動きに対し、17年間、ギャンブルの問題がある人々の回復を支えてきた認定NPO(特定非営利活動)法人ワンデーポートの中村努さんは、政府やマスコミで飛び交っている「ギャンブル依存症」への間違った認識が、逆に当事者の回復を妨げることになる、と危惧している。


「ギャンブル依存症」についての政府やマスコミの認識は、おおむね以下のようなものだという。


「カジノができたらギャンブル依存症が増える」


「ギャンブルをやれば、誰でもギャンブル依存症になる可能性がある」


「ギャンブルに関して問題がある人は全員、ギャンブル依存症という病気で、治療しなければ進行する」


中村さんは、ギャンブルで深刻な問題を抱えている人たちのための回復施設ワンデーポート(神奈川・横浜)を、日本で初めて2000年に立ち上げ、施設長としてこれまで約600人と関わってきた。外見上は「ギャンブル依存症」に見えても、実際は発達障害や軽度の知的障害、統合失調症、ストレスに弱い性格、処方薬の影響など、それぞれにさまざまな「背景」があり、その結果として、ギャンブルに関する「問題」が起きていたという。


設立当初は、アルコールや薬物などの依存症と同様に、従来の回復プログラム「12ステップ」のミーティングを支援法として取り入れていた。しかし、「依存症」に効果があると信じられてきたミーティングに参加し続けても、回復する人は全体の2割程度。8割の人には変化が見られなかった。


その理由は、大半の人にとって必要だったのは、「治療」ではなく、その人の「生活や人生」の諸問題の解決だったからだ。中村さんは、「カジノ法」の是非よりも、「ギャンブル依存症支援対策」の根底にある誤った認識についてこう異議を唱える。


「まず、その人が〝依存症という病気かどうか〟という議論は無意味です。その人を〝ギャンブル依存症〟として見るよりも、まず〝社会のシステムでうまく生きられない人〟〝遊び方が苦手な人〟と捉えることが大事です。そして、その人のギャンブル問題の現象が起きた背景を探り、その人が抱えている課題を解決するために、金銭管理などの生活支援とともに、余暇の過ごし方を教えることが必要なのです」


ギャンブル問題の背景にあるのが、発達障害や弱さから来る「生きづらさ」なら、「治療」ではなく、何かの支援でその人の「生きづらさ」を緩和することによって、ギャンブルから遠ざけることができる。


当事者たちは、ギャンブルにのめり込む以前から、生活上のさまざまな不適応、人生の悩み、仕事のストレス、また先を見通すことが苦手、余暇の使い方が下手、人間関係が苦手、金銭感覚にうといなどという、生き方や人生に関わる諸問題を抱えている。


「ですから、100人100通りの解決法が出てきます。当事者が困っている課題で徹底的に関わって、その人なりの生きがいや社会的役割を一緒に探しながら、その人らしく生活できることが、ギャンブル問題からの回復につながるのだと思います」


こうした理解や認識がないまま、現在、「ギャンブル問題=ギャンブル依存症。病気だから治療が必要で、医療機関を受診させ、相互援助グループのミーティングに参加させる」というレールが敷かれ、ギャンブル依存症支援対策が制度化されようとしている。


「制度によって、さらに依存症というレッテルを貼られ、回復できずに状況が悪化する人が大勢出てくるはずです」と危惧する中村さんは、今後、「望ましい対策」について考えるセミナーを開催していく計画だ。

この記事を読んだ人は次の記事も読んでいます

メールで配信
週刊ニュースレター(無料)登録は
「みなしごにしてはおかない」
みことばの黙想  5月21日
Play Now
再生できない場合は、ダウンロードしてお聞きください