【映画】『汚れたミルク あるセールスマンの告発』

March 10, 2017
【映画】『汚れたミルク あるセールスマンの告発』

(C) Cinemorphic, Sikhya Entertainment & ASAP Films 2014

大手多国籍企業「N」が起こした粉ミルク乳児死亡事件。その実話に基づく映画『汚れたミルク あるセールスマンの告発』(インド・フランス・イギリス合作)は、大企業側の圧力や、マスコミ等の利害関係が複雑に絡み、なかなか日の目を見ない状況が続いていたが、このほど世界で初めての劇場公開が日本で行われる。

今から20年前、大手グローバル企業「N」は、パキスタンで医師らを金品で買収し、母乳から〝世界最高の粉ミルク〟に切り替えるように母親たちに指導をさせた。貧しい母親たちは、粉ミルクを買わされたものの、清潔な水が手に入らないため、不衛生な水で溶かして乳幼児に飲ませた。

粉ミルクの正しい使用法についての指導はなく、また貧困層の母親たちは、粉ミルク缶に書かれた説明の文字を理解することができなかったからだ。そして、大勢の子どもたちが亡くなっていった。

粉ミルクを販売していたパキスタン人のセールスマン、アヤンは、その事実を初めて知って、即座に退職。そして乳児が死亡していることを知りながら、アフリカやアジアで粉ミルクを売り続けていた大企業「N」を告発したのだ。すると、今度はアヤンと家族が〝口封じ〟のため命を狙われることとなった。


拝金主義に市民の声を

主人公アヤンのモデルであるサイヤド・アーミル・ラザ・フセインさんは、1970年、パキスタン生まれ。命の危険を感じて2003年には母国を離れた。現在、家族5人、カナダ・トロントで暮らしている。

本紙のメールインタビューにサイヤドさんは、以下のように答えた。

「告発するために、証拠をまとめ、法的通知を企業側に提出しました。すぐにそこから、企業側からの脅迫が始まりました。私は人権支援団体の助けを得て、この事実を世界に知らせるためにドキュメンタリー映画をつくる目的で、ドイツに渡りました。その頃、初めてパキスタン政府が、ムシャラフ将軍の名前でこう明言したのです。『我々は多国籍企業の投資をこれからも誘致し、彼らのビジネスを守ります』と」

その後、パキスタンの自宅に何者かによって銃弾が撃ち込まれたため、サイヤドさんは、命の危険を感じて、カナダに難民申請をした。しかし、その回答には「このグローバル企業は素晴らしい会社で、あなたの個人的恨みなのではないか」と記されてあった。サイヤドさんは、提出した資料が不足していたことが原因だったと感じている。

転機となったのは、トロント映画祭でこの作品が上映されたことだった。これを見たカナダ政府関係者から「あなたをカナダの市民として誇りに思う」と書かれた証書を受け取ることができた。難民申請から実に7年の歳月が流れていた。

この映画ができたことで、セールスマンが医師をターゲットに営業する販売方法がパキスタンでも規制されたという。しかし、厳密なルールがない中国では急増している。

映画制作を手掛けたダニス・タノヴィッチ監督によれば、この粉ミルク乳児死亡事件は、貧しい国々で現在も続いているという。この拝金主義の問題に対処するには、大勢の市民が映画を見て、声を上げていくことしかないと、監督は考えている。

サイヤドさんも日本で初上映されるにあたり、こう話している。

「他国での上映は未定で、インド、パキスタンでも上映されていません。日本での劇場公開は、非常に勇気ある一歩だと思います。この映画で、一人の赤ちゃんの命だけでも救うことができるのであれば、やってきたかいがあります」

東京・新宿シネマカリテで上映中。全国順次公開。公式サイトはこちら(http://www.bitters.co.jp/tanovic/milk.html)


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