アルツハイマー病でも自分らしく

May 19, 2017
アルツハイマー病でも自分らしく

佐藤雅彦さん

全世界からアルツハイマー病(アルツハイマー型認知症)等の当事者や家族、支援者らが集う「第32回国際アルツハイマー病協会国際会議」が4月26日~29日、京都市の国立京都国際会館で開催され、約70カ国から4千人が参加した。4日間にわたり、およそ230の講演会やワークショップ(参加型講座)、シンポジウム、研究発表が行われたが、注目を集めた二つのワークショップでは、国内外の当事者が自身の体験を語り、「病気を抱えながらも、自分らしく生きられる」と熱弁をふるった。


アルツハイマー病は認知症の一つで、かつては「死ぬのを待つ」だけという絶望的なイメージがあり、家族も病気を隠そうとしてきた。しかし、現在は、さまざまなケアやサポートの方法によって、当事者が〝新しい人生〟を創造し、生活を〝謳歌(おうか)〟できる時代になった。ある当事者は仕事を続け、ある当事者は趣味を増やして楽しんでいる。また、別の当事者は他の当事者を支えるという活動も行っているのだ。


当事者たちは一様に、「アルツハイマー病」などの「認知症」と診断された当初は、さまざまな能力を失う悲しみや苦しみを経験してきている。しかし、その後、「自分らしく」生きることができている秘訣(ひけつ)には共通点がある。


「できないこと」に目を向けて落ち込むことはせず、「できないこと」は周囲や行政に委ねてサポートしてもらうこと。そして、自分自身の「できること」に着目し、その「できること」は自分で行うこと。また趣味など好きなことを続け、人生を楽しむことで認知機能の改善・維持の努力をしていることだ。


大事なことは、症状の軽いうちに「自分がどのような人生を送りたいか」を明確にし、自分の人生を諦めないこと。


二つのワークショップにも登壇した日本認知症ワーキンググループ共同代表でクリスチャンの佐藤雅彦さん(63)は、51歳の時にアルツハイマー型認知症と診断され、ぼうぜん自失、〝地獄〟の日々を送った経験の持ち主。しかし、ある日、聖書の「わたし(神)の目にあなたは価(あたい)高く、貴(とうと)い」(イザヤ書43・4)という言葉に救われ、何があっても自分は人間として尊い存在なのだと痛感して立ち直った。教会の聖歌隊に声を掛けられ、歌うようになってから元気を取り戻していったという。


そして今では、絵を描き、ドイツ語を学び、ピアノを習うなど、新しいことに挑戦し、生活を楽しみながら可能性を広げている。


「生きていく上で大切にしていることは、何事もポジティブ(肯定的)にとらえることです。図書館の休館日に行ってしまった時は、『散歩で来た』と割り切ること。生活に張りがない部分は、新しい趣味を始めること。記憶がないといった部分は、携帯電話の記録やアラーム設定を利用するなど、工夫によって乗り越えることができます。認知症になって、不便であっても不幸ではありません」


また同じくワークショップで発言した当事者の丹野智文(たんのともふみ)さんは、認知症になると、人から「怒られることが多くなる」が、自身の日常生活をこう話した。


「自分でコーヒーをいれたことも忘れ、妻に『コーヒーありがとう』と言うと、妻が『大丈夫、いいよ、いいよ。自分(あなた)がいれたけどね』と笑い飛ばしてくれます。怒られない環境がとても大事です」


認知症の当事者たちにとっては、自分たちが何に困っているのかを情報発信し、当事者が生きやすい環境づくりをすることが重要になる。また元気な認知症の人々の姿は、同じ病を得た当事者にとって希望や励みとなる。さらに家族や恋人、友人らも「介護従事者」や「支援者」としてではなく、人生のパートナーとして共に人生を楽しみ、支え合うことが大切になってくると、同国際会議参加者の当事者たちは話す。


日本には現在、認知症関係当事者団体として以下の大きなグループが五つある。①認知症の人と家族の会②日本認知症ワーキンググループ③全国若年認知症家族会・支援者連絡協議会④男性介護者と支援者の全国ネットワーク⑤レビー小体型認知症サポートネットワーク。


これらの5団体が、今回の国際会議で初めて一堂に会した。当事者や家族が互いに人生を謳歌するためには、きめ細やかな支援が必要になる。スウェーデンでは、認知症の患者の多くが軽症にとどまり、その約半数が、一人暮らしできるほど支援システムが充実している。


一方、日本では、まだ「家族が介護しなければならない」という考え方が根強くある。その背景には、40歳未満の若年性認知症の人は介護保険利用の対象外になっているなど、行政等の支援体制が整っていないという現実がある。


こうした現状を踏まえて、今後は5団体が連携しながら、政府に法整備を求めていく方針を打ち出している。

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